手首のない少女の噂が残る旧小峰トンネルとは
旧小峰トンネルは、東京都八王子市とあきる野市の市境、小峰峠を貫く古い隧道です。正式には「小峰隧道」といい、五日市側の扁額には「大正五年二月成」と刻まれていることから、1916年(大正5年)2月に完成したと伝えられています。
坑門には今も赤煉瓦の意匠が残る、小ぶりな隧道です。新小峰トンネルの開通で旧道側は役目を終え、いまは歴史散策やハイキングで知られる一方、「手首から先のない少女の幽霊が出る」という噂の心霊スポットとしても、たびたび名前の挙がる場所となっています。

旧小峰トンネルがある場所
小峰峠は、八王子市上川町とあきる野市小峰台にまたがり、都道32号八王子五日市線(秋川街道)の旧道にあたります。最寄り駅はJR五日市線の武蔵五日市駅、車なら圏央道のあきる野インターや八王子西インターが起点になります。トンネル周辺に駐車場はないため、車で訪れるなら小峰公園の駐車場を利用し、そこから徒歩約10分で向かうのが一般的です。
名称
旧小峰トンネル(小峰隧道)
所在地
東京都八王子市〜あきる野市の市境(小峰峠)
種別
トンネル(隧道)
周辺環境
小峰峠の旧道沿い、山道・峠道
現在の状況
車両通行止め(徒歩・自転車のみ通行可)
旧小峰トンネルが心霊スポットとして語られる理由
旧小峰トンネルが心霊スポットとして語られる理由を考えるとき、まず目を引くのが赤煉瓦造りの坑門です。車止めの先の旧道を進むと、草木に埋もれるようにその姿が現れます。額には右書きで「小峯隧道」と刻まれ、「峰」ではなく旧字の「峯」が使われています。100年以上前に掲げられた文字は、今も当時の面影を静かに伝えています。
少し興味深いのは、この隧道において入口と出口で掲げられた文字が異なることです。八王子側には「小峯隧道」、五日市側には「大正五年二月成」と、完成年月だけが右書きで刻まれています。短い暗がりを抜けると迎えてくれるのは、先ほどとは違う文字。同じ隧道でありながら入口と出口で印象が変わることも、この場所の不思議な雰囲気を印象づけているのかもしれません。
坑門の赤煉瓦は歴史あるたたずまいを保っていますが、いったん内側に入ると、その印象は大きく変わります。内壁は後年の補修で吹付けコンクリートに覆われ、煉瓦の温かみは消えて、のっぺりとした灰色が続いています。堂々とした古い「顔」の奥に、年代の見えない無表情な空間がのびている……。その落差に、どこか落ち着かないものを感じる人もいるようです。
そして、なにより印象的なのは、この場所を包む静けさです。かつては商人や路線バスが行き交った道も、いまは誰ひとり通らない旧道となりました。その静けさが訪れる人の想像をかき立て、心霊スポットとしての噂を生んだのかもしれません。
語り継がれる「手首のない少女」の噂と体験談
このトンネルでもっともよく知られているのが、「手首から先のない少女の幽霊が現れる」という噂です。トンネル内や坑口付近で少女を見たという話は古くから語り継がれ、テレビの心霊番組でも取り上げられたことで、都内を代表する心霊スポットのひとつとなりました。
体験談としては、トンネルを抜ける際に背後から足音を感じた、バックミラーに誰もいないはずの人影が映った気がした、といった話も伝えられています。また、峠に差しかかると急に車内の空気が重く感じられたり、理由もなく心細くなったりしたという声もあるようです。
もっとも、これらはいずれも噂や体験談として語り継がれてきたもので、事実を裏付ける証拠は確認されていません。それでも、数多くの噂が語り継がれてきたこと自体が、旧小峰トンネルの独特な存在感を物語っているのでしょう。
絹の道を越えた小峰峠と赤煉瓦の隧道
小峰峠は、古くから八王子と五日市(現在のあきる野市)の間を結ぶ主要なルートでした。1859年(安政6年)に横浜港が開港すると、輸出向けの生糸の流通が一気に増え、五日市周辺で生産された生糸を八王子へ運ぶ道として、峠越えの重要性がしだいに高まっていきます。
険しい峠道を人や馬が越えていた時代を経て、1916年(大正5年)に小峰隧道が完成しました。赤煉瓦造りの隧道は、「絹の道」の一部として地域の物流を支えます。その後、輸送の主役は鉄道へ移りましたが、赤煉瓦の坑門は今も当時の面影を残しています。
新小峰トンネルの開通と、旧道になった小峰隧道
幅が狭く高さ制限もあり、カーブの多い峠道は、時代が下るにつれて交通の難所となっていきました。新小峰トンネルが開通するまでは、路線バスも走る現役の都道でしたが、車がすれ違うのも難しいほどの狭さで、利便性や安全性の面では課題を抱えていたと言われています。
そうしたなか、小峰峠をまっすぐ貫く新小峰トンネルが開通し、峠道そのものを越える必要がなくなりました。開通の時期については、資料によって1999年から2002年ごろと幅がありますが、いずれにせよ、これを境に旧道側の小峰隧道は交通路としての役目を終え、人通りの少ない静かな旧道へと姿を変えていきました。
現在の通行状況と訪問時の注意点
現在、旧道の入口には車止めが設けられ、「180m先 完全通行止め」といった表示が出ています。車やバイクは通行できませんが、徒歩や自転車であれば通り抜けられる状態のようです。トンネルは建設から100年以上が経ち、現在もあきる野市によって点検や補修が続けられていると伝えられています。
訪れる際は、周辺の私有地や立入禁止区域に立ち入らないこと、そして近隣の住民や散策する人への配慮を忘れないことが大切です。山あいの道は日が落ちると急に暗くなり、悪天候のときには倒木などの危険もあります。夜間や荒天時の無理な訪問は、避けたほうがよいでしょう。
旧小峰トンネルのまとめ
旧小峰トンネル(小峰隧道)は、八王子とあきる野の市境、小峰峠を貫く1916年(大正5年)完成の赤煉瓦の隧道です。かつては生糸を運ぶ「絹の道」の一部として、また路線バスも通る秋川街道の要衝として、長く地域の往来を支えてきました。
新小峰トンネルの開通によって役目を終えたあとは、歴史散策やハイキングの立ち寄り先として知られる一方で、「手首から先のない少女の幽霊が出る」という噂の残る心霊スポットとしても、名前が挙がるようになりました。
| 知名度 | ★★★★☆ |
|---|---|
| 噂の量・多様性 | ★★★☆☆ |
| 裏付けの強さ | ★★☆☆☆ |
| 現地の雰囲気 | ★★★★★ |
| 体験談の一貫性 | ★★★★☆ |
旧小峰トンネルは、歴史ある赤煉瓦の隧道であると同時に、多くの心霊の噂が語られる場所でもあります。実際に訪れると印象に残るのは、噂そのものよりも、100年以上の歴史を刻んできた隧道と、静かな旧道が醸し出す独特の空気なのかもしれません。
※本記事は現地への訪問・肝試しを推奨するものではありません。


